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日本刀の地鉄を綺麗に撮影する方法

日本刀の見どころの1つである、地鉄は銘がない刀の時代や刀工を特定するための重要な手がかりの1つです。

折り返し鍛錬を行うことで出来るもので、刀工の個性を見る楽しみでもあります。日本等を鑑賞する上ではぜひ見ておきたい部分でもあります。

今回はこの地鉄を綺麗に撮影する方法についてご紹介します。

 

 

そもそも地鉄とは?

地鉄(じがね)は日本刀の原材料となっている、玉鋼(たまはがね)を折り返しして鍛錬を繰り返す、折り返し鍛錬によって出来る肌模様です。

この模様にもいろいろな種類があり、刀工によって違いはありますが大体は先代と似たような肌模様が出来上がります。

そのため、この模様によってどこで作られた刀か、誰の作品かであったり流派もある程度判断出来ます。

日本刀の情報を得るためにはとても重要な存在ですが、手にとって光の角度を調整して近距離じゃないと見えてこないので展示会では非常に見えにくい部分でもあります。

 

よく展示会とかで瞼でルーペを挟んでみたりしている人もいますが、地鉄に関しては光の当て方と角度の問題があるので恐らく見えていないでしょう。

写真撮影が出来る展示会もありますが、それでも本体がケースに入っているので地鉄を撮影するのはマクロレンズを使っても無理でしょう。

ただし、ストロボや定常光を持ち込んで(無理だと思いますが)ライティングを組めば見えるかもしれませんが、それが許可されるのは相当稀なケースだと思います。

 

 

地鉄が見える刀と見えない刀

次に撮影前の事前知識として知っておかないといけないのが、地鉄が見える刀と見えない刀(ものすごく見えにくい)があります

これは刀が作られた年代が関係しており、天下統一された後に作られた刀(江戸~)は物凄く見えにくいと言われています。実際に室町時代の脇差と江戸時代の脇差を持っていますが、江戸時代の脇差は地鉄が見えないです。

自分で所有しているので手にとって好きなように見れますが、頑張って刃文は見えましたが地鉄は未だにはっきりと見えていません。

室町時代の脇差は角度関係なくどこから見ても地鉄が普通に見えています。ここまでわかりやすいのは珍しいかもしれませんが、明らかに見やすさの違いはあります。

 

それでもプロに鑑定依頼を出すと地鉄の詳細がわかったので、見えることは見えるようです。ですが、鑑定のプロ以外が見てわかるか、と言われたら難しいです。

ですが地鉄が見えにくい、見えない、となってもストロボの当て方1つで見えるようになることもあります

肉眼で見えているものと写真が同じとは限りませんし、写真を撮っている人ならよく分かると思いますが写真で見ると見え方も変わってくるものです。

ストロボを当てればイメージを変えられる、それを利用して肉眼で見えない部分を見えるようにします。

 

 

地鉄の撮影方法のポイント

今回はストロボ1灯だけにします。地鉄が見えて撮影できるところまでが今回のテーマなので地鉄にフォーカスして撮影します。

手に持って確認出来る場合はマクロレンズが非常に有効です。展示ケースの中だとまずケースに反射される可能性もありますが、ケース外ならその点は問題なしです。

今回使っている機材はこちらです。

 

カメラ本体:Lumix G9(Panasonic マイクロフォーサーズマウント)

レンズ:Leica 45mm マクロレンズ(マイクロフォーサーズ)

ストロボ:Godox TT600

 

ソフトボックス類なし、ストロボ直当てでいきます。刀全体を写したりすることを考えれば使ったほうがいいですが、地鉄とか刃文なら直当てのほうがやりやすいです。

かなり接近しないと地鉄自体が見えないのでマクロレンズで接近して撮影します。

※クリックして拡大推奨

 

この刀の地鉄は板目流れて刃寄りに柾がかると表現されます。呪文のような表現方法ですが、木材の板を思わせるような模様をしつつも刃の縁の部分に縦縞模様が入っている、ということを意味します。

ちなみにこれはストロボ1灯でかなり接近して撮影しています。体勢的に座ったままファインダー覗くのが無理なくらい接近してます。

江戸時代初期の刀ではありますが、肉眼でこれが見えているかと言われると微妙です。見えないことはないですが今より視力が落ちたら多分無理です。

 

ちょっと暗めの写真も用意しました。画像の右下部分、木の年輪っぽいところも見えたりしています。

こういったところを見せるようにすると、木目であることがより伝わりやすくなります。

ストロボの設定ですが、明るさはF値とISO感度次第なところもありますが大事なのが照射角度です。

今回は地鉄さえ撮影できればいいので、広い範囲ではなく狭い範囲を撮影したいわけです。物凄く接近してそこだけ撮影できればいい、となるとTT600なら200mmとかなり狭くします

あとはストロボとの距離であったり配置によってパワーを調整して、シャッターを切るだけです。

今回はISO100~200、F6.3とF2.8で撮影しています。

 

部屋の電気は付いていますが設定自体をストロボが光らなければ何も映らないようにしていますので、部屋の電気の影響は受けていません。

RAW現像もしていない、jpg撮って出しになります。

 

 

刀置きは必須

実際に刀を持ったことがある人は少ないと思います。時代劇とかで機敏に動いて敵を斬っていくシーンとかありますが、刀は結構重いです。

脇差だから軽い、とかではなく普通に40cm程度ある刀を5分間持ち続けることですら結構大変です。

撮影する時には必ず刀置きを用意しましょう。刀置きにおかずに撮影できるのは本当に数枚程度ですし、万が一のことがあれば大怪我に繋がります

 

いわゆるなまくら刀がありますが、なまくら刀でも包丁よりはマシ、と言われているくらいです。

包丁よりはマシ=包丁よりまだ切れ味がいい、ですのでそれ以上のものになってくるとまだ斬れる可能性もあると考えたほうがいいです。

刀置きは何かで代用するのではなく、ちゃんと刀置きとして売られているものを買うことをおすすめします。

大体は分解できるので使わない時は分解してしまっておきましょう。

 

以上となります。刀の撮影は簡単ではないですし地鉄は接近しないと見えないので難しいところでもありますが、日本刀の見どころの1つです。

練習して撮影できるようになりましょう。