ここまでの内容でF値・シャッタースピード・ISO感度について学びました。
写真を撮る上では避けては通れない設定であり、この3つの設定を理解していないと求めている写真は撮影できません。
目次
3つの設定のおさらい
再度3つの設定についておさらいしましょう。
F値
ピントが合っていない所(前後)をぼかし、明るさを変えます。
F値が低い(開放)でよりぼかして明るく、F値が高い(絞り)とぼかさず暗くなります。
背景をぼかすためには被写体と壁(ぼかしたいところ)の距離も重要です。
シャッタースピード
動きのあるものの動きを止めたり、明るさに影響のある設定です。
シャッタースピードの表記は1/100のように何分の1秒か、で表記されます。
シャッタースピードが遅い(1/2→0.5秒)とぶれやすく明るくなり、速ければ(1/100→0.01秒)ぶれない代わりに暗くなります。
これは被写体の動きだけではなく、カメラを持つ人の動きでもぶれてきます。
ISO感度
ISO感度は明るさに影響のある設定です。高くすればノイズが出るので注意が必要です。
ISO感度が低ければ暗く、高ければ明るくなります。この
基本の3つの設定は以上です。どんな撮影であってもこの3つの設定を理解しておく必要があります。
撮りたい写真を最初にイメージする
設定を決める前に最初に撮りたい写真のイメージを決めます。
この3つの設定は撮りたい写真を撮るために必要な設定に変えるので、撮りたい写真が決まっていなければ設定をどうすればいいのかも決まりません。
被写体の動きが素早く捉えるのが難しいならシャッタースピードは速くしないとぶれぶれの何が写っているのかわからない写真になりますし、深夜に星空を撮影したいのなら明るさを確保しなければなりません。
何も決まっていなくてもシャッターさえ押せれば写真は撮れますが、それが真っ白だったり真っ黒だったりと何も見えない写真になることもあります。
とりあえず見えるようにするのであれば、3つの設定を触ればとりあえず見える写真にはなります。綺麗かどうか、撮影した人や依頼主が納得するかどうかは別として、見える写真にはなります。
撮りたい写真がどんなものかイメージが決まっていないので、これでいいのか?という疑問が常に出てきます。
そうならないよう、最初に撮りたいイメージを確定させます。
例えば今回はF値の説明のところにあった写真を撮りたいとして、イメージを用意します。
背景を大きくぼかして全体を明るめにしたい、をテーマとします。
撮りたいイメージから設定の順番を決める
この場合、まず決めるべき設定はF値です。
F値を最初に選ぶ理由としては、今回のイメージ写真を見てポイントとなる部分を抜き出します。今回の場合は3つあります。
・背景がよくぼけている
・被写体に動きはない
・明るめの写真
この3つのポイントを1つ1つ見ていきます。
ポイント1:背景がよくぼけている
考え方1:F値は低い+背景をぼかすための設定はF値しかない
背景がよくぼけている、ということはF値に関してはかなり低め(開放)で撮っている事がわかります。
あくまでイメージなので完全に同じぼけ具合である必要はありませんが、この時に設定するなら手持ちのレンズを一番開放にするということです。
実際に撮影してみないとOKかNGかはわかりませんので、とりあえずかなり開放するということでF値は低めに決まります。
次に決めるのがシャッタースピードです。
ISO感度は明るさにだけ影響するので最後で大丈夫です。明るさが足りなければ上げればいいだけですのでシャッタースピードを見ていきます。
ポイント2:被写体に動きはない
考え方2:手ブレしない程度のシャッタースピードならいい
今回は被写体に動きがありません。止まってください、といえば普通に止まってくれるでしょう。
ということは被写体が動くことによるぶれの心配は不要となるので、自分自身のカメラの手ブレと明るさにさえ注意すればいい、となります。
先程決めたF値がかなり低めになるので、既にそれなりに明るい状態です。そうなるとシャッタースピードは速くしないと明るすぎて真っ白になりかねません。
シャッタースピードを速くすれば写真は暗くなり、手ブレの心配も無くなります。
具体的な数字はその環境によって変わりますが、F値を考えると普通に構えて撮影して手ブレすることはないくらいの速さにはなりそうです。
ここまで決まればISO感度ですが、今回は明るさを確保できているのでISO感度は低めでも問題なさそうです。
ポイント3:明るめの写真
考え方3:ISO感度は低めにする(既に他の設定でかなり明るい)
今回のイメージ写真に近いのを撮影するとしたら、シャッタースピードとISO感度に関してはほぼ明るさ調整用として設定します。
調整するときもシャッタースピードから先に設定していきます。シャッタースピードで限界だと思ったらISO感度を調整しましょう。
ちなみに今回のイメージ写真の各種設定は以下になります。
F値:1.2
シャッタースピード:1/125
ISO:100
フルサイズでズームレンズ使用、63mmの設定にしています。
実際に撮影する時にはイメージと手持ちの機材、環境に合わせて設定を変えていきましょう。
望遠レンズを使えばF値が多少高くてもそれなりにぼけるので、F値を重視せずに望遠レンズを使うという方法もあります。
イメージ通りにならなくても撮る
仮にイメージ通りの写真が出来なかったとしても、その写真は消さずに残しておくことが大切です。
イメージ通りでなかったとしても、その写真はその時の自分自身の記録でもあり大事なデータでもあります。
写真データにはF値・シャッタースピード・ISO感度の設定値が記録されており、後で見返すことが出来ます。
イメージ通りになるかどうかはシャッターを押して写真として確認するまでわかりません。
迷ってシャッターを押せないというのが何も残らず結果がないとなってしまうので、とにかくシャッターを押すことです。
そのデータを後で見返して、あの時どの設定をどうすれば理想のイメージに近付ける事ができたかを考えましょう。
撮影中は余裕がなくて落ち着いて設定を変えることが出来ないかもしれませんが、後から見返せば驚くほど冷静にどうすればいいのかが見えてきます。
どうすればいいか、がわかるようになればある程度は撮影に入る前に事前に設定ができます。
背景をぼかすならF値低めで用意しておけばいいですし、明るさもわかっているのなら最初から設定を終えた状態で撮影に入ることも出来ます。
設定の修正が必要なければその分の時間が使えますし、何よりいいスタートダッシュが切れるので自分自身のやる気やモチベーションアップにも繋がります。
心に余裕ができれば撮影中に設定を変えるとしても落ち着いて対応できますし、イメージ通りの写真が撮れる確率も上がります。
ただそれが出来るようになるにはとにかく写真を撮って、データを見て、設定を見てどうすればよかったかを考えて実行していく事が大切です。
その時だけで終わらせるのではなく次の撮影に活かして、その撮影データをまた見てどうするかを考える、これの繰り返しで上達します。
撮影した写真を見返して考える
先程のイメージを使って撮影をしたとします。その結果がもしこのような写真になった場合、どうしてそうなったのかを考えるようにします。
イメージとしては背景を大きくぼかした明るめの写真でした。ですが今回出来上がったのは暗めで背景も全くぼけていません。
もし依頼主から渡されたイメージがあの写真だとするならば、これを納品してもNGを出されてしまいます(そもそもこれを納品してはいけない)。
イメージ写真を比較して、何が問題だったか、どうすればイメージに近付ける事ができるかを考えます。
そのためには基本の3つの設定をしっかり理解しておかないと、どれだけ考えても答えは出ません。
まず問題点を洗い出します。今回の場合は主に2つです。
・全体的に写真が暗い
・背景がぼけていない
問題点としては2つですが、解決するためにするべきことは1つだけです。
背景をぼかすために設定を変えるとなれば、F値以外に答えがありません。
F値を低くすれば明るさも連動して確保できるようになるので、F値を変えるだけで2つの問題が一気に解決します。
どの程度まで明るくなるのかは実際に変えて撮影しないとわかりませんが、明るさだけが足りないのであれば他の設定でも補えます。
シャッタースピードでもいいですし、ISO感度でもいいです。状況に合わせてどちらかを変えて明るさを確保しましょう。
そうすれば先程の写真もこのように変わります。
今回はF8、ISO400→F2.2、ISO100にしたものです。
イメージはあくまでイメージなので、必ず同じ被写体・同じ背景にしなければならないということではありません(要望があれば別)。
今回のは背景を大きくぼかして全体を明るめにしたい、が要望です。
背景が違ってもぼけていて明るさを確保できているのなら、今回の要望には応えられています。
あとは実際に依頼主に写真を見てもらって確認します。もうちょっと被写体を左に、とかもうちょっとだけ暗くていい、とか色々と出てくるので対応しましょう。
まとめ
最後にまとめです。
・撮りたい写真のイメージから3つの設定の優先順位を決める
・それぞれの役割を理解していないとイメージ通りの写真は撮れない
・イメージ通りじゃなくてもとにかくシャッターを押して写真を残す
撮影する側としてはこれでいいのか?という写真でも依頼主がものすごく気に入る事もあります。
気にいるかどうかは見てもらうまでわかりませんし、そのためにはとにかくデータがないと見せるものもなく何も始まりません。
とにかくデータを残して後で見る、を忘れないようにしましょう。
練習課題
今回は基本となる3つの設定の再確認とどう考えたらいいのか、について学びました。
実際に自分でこういう写真を撮る、とテーマを決めて撮るのが一番です。テーマが決まらない場合は練習課題に挑戦してみてください。
課題の取り組み、提出は任意ですが提出することで講師からのフィードバックを受けられます。
課題1.背景を大きくぼかしつつ、少し暗めの写真を撮影してみよう
背景はしっかりとぼけているのに全体的にちょっと暗い写真を撮影してみましょう。
課題2.背景をぼかしつつ、動く被写体に動きをつけながら全体は少し暗めで撮影してみよう
少し難易度の高い撮影になります。明るさがポイントです。
課題1と同じくらい背景がぼかせられるようになったら素晴らしいですが、難しければ課題1ほどぼけていなくても大丈夫です。
課題3.星がはっきりと見えるような星空を撮影してみよう
星空撮影は3つの設定をちゃんと抑えていれば出来ます。三脚があると安定して撮影できるので持っている方は使っていきましょう。
課題の提出について
課題の提出方法はメッセージ機能を使って担当フォトグラファーにファイルを添付して送信して下さい。
ファイル名とファイル形式はそれぞれ以下に変更して下さい。ファイル名が異なりますとどの講座のものか確認出来ず再提出となる場合がございます。
課題1のファイル名:2-5-1
課題2のファイル名:2-5-2
課題3のファイル名:2-5-3
ファイル形式:jpg