日本刀写真集を作りたい、日本刀をゆっくり誰にも邪魔されず眺められる環境を作りたい、という気持ちがありスタートしました。
鳴白の運営する日本刀写真集の狐鍛で写真集の販売を行います。
オンラインで閲覧できる形式(要会員登録)と写真印刷(L版又はA4サイズ)の2パターンを用意します。
将来的には日本刀を直接見れる完全予約制の店舗も構えたいと思っています。
その第一弾として、短刀を研ぎに出すことにしました。
正直、研ぎに出すと何ヶ月も自分の手元を何ヶ月も離れてしまうので躊躇ってしまい、見積り依頼をするだけで2ヶ月くらいかかりました。
ようやく決心がついて見積り依頼をして、想定通りの金額だったのでそのまま依頼しました。
今後、日本刀の研ぎ依頼をされる方の参考になればと思い公開しています。
あくまで今回の場合の流れなので、実際には人によって色々と違う点も出てくるはずです。全体の大まかな流れはこんな感じなんだ、程度にご覧ください。
リアルタイムで書いているので、この記事を書いている段階(2021年12月11日時点)では見積もりを終えて依頼して「刀を送って下さい」と言われた所までです。
今回研ぎに出した刀は短刀、銘:粟田口吉光です。
目次
研ぎ依頼で最初に決める事は3つ
1.どの刀を研ぎに出すか
研ぎ依頼で最初に決めることの1つ目がどの刀を研ぎに出すか?を決めることです。
個人的に持っている刀が10振り以上あって、殆どが研ぎが必要な刀です。購入先が全部オークションなので古研ぎ、錆あり、色々とあります。
1振りしか持っていない、のであればその1振りしか選択肢がないですが2振り以上あれば悩みます。
研ぎの価格は刀が大きければ大きいほど高くなっていきます。短刀は固定で脇差からは一寸○円、というのが多いです。
なので短刀なら予算がわかりやすいですが、脇差からは大きさ次第です。一言に脇差と言っても最短と最長では2倍の差があるので価格も大きく変わってきます。
2.研ぐ内容(ランク)はどれにするか
予算は研ぐ刀とランクを決めてから用意しました。むしろこれを決めずにいくら用意したらいいのかわからない予算を組むのは無謀です。
大体の目安は書いてあるので、それをもとに計算しましょう。
安ければいい、というわけではなく安いランクだと刃文が直刃になったりするらしく、居合とかで斬るのが中心の人向けのようです。
研師さんのホームページによっては「こんな人にぴったり」な目安が書かれている事があります。
それを見て決めるのが一番いいでしょう。
3.誰に頼むか
個人的に一番大事な部分だと思っています。研師さんも人間ですので当然ながら相性というものがあります。
相性の合いそうな人に研ぎを依頼するのが一番です。大事な刀を何ヶ月も預けて研いでもらうわけですから、信用できそうかとかそういった部分が大事です。
また、人によっては依頼が殺到していて研ぎに入るまでに相当な時間がかかるパターンもあります。
居合でそれなりに急いでいる人の場合は悠長に待っている暇がないので、すぐに対応してくれる人を探したりする必要があります。
観賞用としての研ぎ依頼であれば多少待つのもいいかもしれませんが、それだけ刀を長い期間預けることになるのでそこも考えて依頼しましょう。
研ぎ依頼の流れ(見積もり~郵送まで)
ここからは実際に研ぎ依頼をするまでの流れです。研師さんによって対応が変わる部分もあるかと思いますので、参考程度にどうぞ。
1.現状の刀の写真を撮る
見積もりをしてもらうためには実際に見てもらうのが一番手っ取り早いですが、現実的な方法としては写真を送付してみてもらいます。
今回依頼した研師さんは直接送ってみてもらったり、店舗があるので持ち込んで見てもらうのもOKなようですが写真で見てもらいました。
写真だけでは判断できない部分も多いですが、それでも見積もりは出来ます。見積もりはあくまで「これくらいかかりそうです」の目安です。
その見積もりを出してもらうために、まずは刀の現状の状態を撮影して見積り依頼をします。
刀の長さで価格が変わる、と書きましたが実際には錆や傷の状態によっては追加料金がかかることもあります。
完全に綺麗にしようと思ったら研師さんだけでは終わらないパターンもあります。研ぎでどうにもならないものは別の職人さんに依頼しなければなりません。
ここでフォトグラファーやってて良かったと思えたのが、研師さんから写真で状態が把握しやすく助かりました、と言われたことです。
日本刀の撮影は物撮りの中でも飛び抜けて難しいのでかなり気合を入れて撮影しました。
2.依頼時の日本刀撮影のポイント
今回は研ぎ依頼なので普段とは撮影方法が違ってきます。写真で刀の状態を伝えなければならないので、良く見せるではなくありのままを見せることが大切です。
錆は錆でしっかりと見せて、傷は傷でしっかりと隠さず撮影するのがポイントです。
普段の撮影であればそういった部分は隠すべきとされていますが、今回は見せていかないと見積もりに影響が出ます。
現物を見て見積もり出した分では無理です、追加料金が必要です、と言われたら送料も時間ももったいないです。
なので綺麗に撮ろう、とか良く見せよう、ではなく悪い部分をむしろアピールしていくくらいの気持ちで撮影したほうがいいです。
錆が刀身のどこまで広がっているのか、刀の全体だけではなく錆の部分をアップで撮影すると伝わりやすいです。
いいカメラがないと駄目とかそういったことはなく、iphoneとかでも全然撮れます。
写真を撮る時ってどうしても良く見せたいって気持ちが出てきますが、今回は抑えて状態の悪い部分は悪い事をしっかり伝わる写真を撮りましょう。
3.返信を待つ(見積もりが返ってくる)
写真を送ったら後は待ちます。依頼したときはタイミングが良かったのか、3時間位で返ってきました。
メール送ったのが夜中で深夜に返ってくるというものすごいスピード対応でびっくりしました。見積もりも載っていました。
今回写真で状態が伝わっていたので、見積もりのままでいけそうな感じでした(まだ研いでないので未確定ですが)。
見積もりをもらってそれで了承するなら返信を、ということだったので返信しました。
これで依頼が出来ました。
その次の返信で送付先が記載されていたので、次は刀を梱包して送付です。
4.刀を梱包する
刀の梱包はかなり厳重にしたほうがいいです。刀を買った時に毎回思ってたのが厳重過ぎるんじゃないか?ってことです。
ですがそれでもちょっとした衝撃で目釘が折れたりするので、思っているよりも厳重梱包でいいと思います。
今回送ったときにはプチプチを3重に巻きました。もう外観からは刀どころか何を包んでいるのか見えないくらい厳重にしました。
過剰かな?と思ったらもう1重巻くくらいの厳重梱包で送りましょう。
ダンボールは縦長タイプのダンボールがおすすめです。上下に隙間ができる場合は、プチプチを丸めて突っ込めば高さ調整が出来ます。
高さ調整しつつ切先と茎部分を厳重に保護出来る効果もあるので、惜しみなくプチプチを使いましょう。
ちなみに昔、アンティークコインを扱う商売をしていましたが、その時も尋常じゃないほど厳重梱包が基本でした。国内・海外問わず厳重です。
高額商品=超厳重梱包はどこでも共通なようです。何度もいいますが過剰かな?と思ったらもう1回巻くくらいでいいんです。
ダンボールは縦長タイプがおすすめです。ダンボール 縦長とかで検索すると出てきます。
5.発送する
最後に発送します。これは普通の荷物を送るときと同じなので、特に何もないです。
ただ運送業者によっては日本刀がNGな場合もあるかもしれないので、事前に確認しておくと安心です。
個人的にやっておいたほうがいいなと思ったこと
発送したら後は研いでもらって終わるのを待つだけですが、これはやっておいたほうがいいと思ったことです。
必須ではないですが、心配性な人とかはやっておいたほうが安心出来ると思います。
1.研ぎ前の状態を記録する(できれば写真で)
見積もりの段階で写真を撮っていますが、それとは別に記録用として写真を撮っておきます。
これは刀本体だけではなく、鞘とかハバキとか登録証も発送するものは全部撮影しておきます。
研ぎ依頼に限らず、何かを人に預けて戻ってくる場合はその人に渡す前の状態をしっかりと残しておくと後々何かあった時に便利です。
何かしらのトラブルが起きた時、元はどうだったのかを証明できますし研ぎ前と研ぎ後の比較をする事も出来ます。
特に今回は初依頼だったので、どう変わるのかってのをしっかり見ておきたいこともあって写真に残しています。
2.発送は追跡可能かつ追跡番号は残しておく
次に発送方法と追跡番号の管理です。刀だからではなく、高額商品を送ったりする場合は必ずやっておいたほうがいいです。
発送方法は必ず追跡できる方法にしましょう。追跡番号がないと荷物の現在地がわからず何も出来ません。
追跡番号も同様にわからないと何もできなくなってしまうので、セットで記録しておきましょう。
これは写真でなくとも、研師さんにメールで連絡してそのメールを保管しておく、とかでもいいと思います。
ただ万が一に備えるのであれば配送業者の出している伝票控えがあるといいでしょう。これは研ぎ終えて返ってくるまで保管します。
全てが終われば不要になるので、終わったものから捨てていきます。
3.登録証をスキャン又はコピーしておく
人によっては研ぎに出すかどうか関係なく、手元に届いた段階でやっているかもしれませんが登録証をスキャンするかコピーを取っておきましょう。
所有者変更届を出す際にコピーは必要になるので、その時に保管用としてもう1枚コピーしておくのもありです。
これも手元を離れてまた戻ってくる事を考えて念のために取っておきます。
刀と登録証を並べて撮影して、この刀にはこの登録証が付いてますよってのを残しておくのもいいと思います。
誰かに見せるためのものではなくあくまで自分で管理するためのものなので自由ですが、取っておいて損はないでしょう。
4.その他関連するものは全部残しておく
自営業をされている人だと領収書とかの確定申告に関する書類は全部まとめて保管していますが、それと同じように研ぎ依頼に関する書類関連はまとめておきましょう。
例えば見積り依頼をメールでしたのであれば、そのメールを保管する(印刷してもいい)とか記録を残しておきます。
個人的に「とにかく記録に残す」を基本にしているので、電話でのやり取りはせずに基本メールでやり取りするようにしています。メールのほうが記録を残しやすいです。
記録が残っていると今後の研ぎ依頼をするときの参考資料にもなりますし、自分用メモとしても残しておけます。
クリアファイルとかにまとめて入れておくと後で探しやすくなります。
まとめ
最後にまとめです。
・どの刀を研ぐのか、ランクも合わせて決める
・誰に頼むのかを決めて見積り依頼をする
・見積り依頼をするときは写真を添付する
・発送前に刀の状態と登録証を撮影しておく
・研ぎ終わるまで関連書類・メールはまとめて残しておく
今回は研師さんに刀を送るまで、ですが進展がありましたら続きを書いていきます。